日医連ニュース
日本医師連盟ニュース
2005/12/25(Sun.) 第35号 1・2・3/3 INDEX
―第10回武見セミナー開催―
武見元日医会長の提言と新たな医療制度改革

植松委員長【植松委員長挨拶】
 本日のセミナーは、今回で十回目ということになりましたが、あと二年すれば選挙ということで、よりいっそうのご支援をお願いしなければなりません。
 さて、ご承知のように政府・与党の医療制度改革は、国民に負担増を求めるとともに、診療報酬はマイナス改定という方向で話が進められております。とくに、財務省からは、五%以上の診療報酬切り下げという病院を潰しかねない案まで出されておりますが、そうした非常に厳しい情勢のなか、武見先生には自由民主党の各種会合のなかで懸命にご努力いただいているところでございまして、これからもますます頑張っていただかなければならないと思っております。

武見敬三参議院議員【武見敬三参議院議員講演要旨】
 現在、医療制度改革の議論の最中であり、十二月一日に政府・与党医療改革協議会で医療制度改革大綱が最終的にまとまる見通しであります。しかし、こうした議論の原型は一九六一年の皆保険制度導入時から始まっており、その主導権を握っていたのは日本医師会だったのであります。

財政論的議論に傾斜する医療改革への疑問

 父は一九五七年から二十五年間、日本医師会長を務めましたが、この間一九六一年の一斉休診と一九七一年の保険医総辞退があります。一斉休診の闘いには、当時保険者を寄せ集めてつくった皆保険制度の導入に際し、保険者による制限診療を撤廃させる目的があり、また自由民主党、財界、官僚の鉄のトライアングルに対する政治的挑戦でもあったわけであります。
 ところで現在議論されております高齢者医療保険制度については、その議論が、財政論に集中しがちで、終末期を含めた高齢者の疾病構造や医療サービスの内容には発展しません。この質の議論に関して、今日ほど医療提供者側に立った政策論が求められていることはありません。

「健康価値」と「経済的な価値」の両面からの政策論議が不可欠

 先の一斉休診、保険医総辞退において、父と当時自由民主党の政調会長だった田中角栄氏の間で取り交わされた四項目についての合意文書があります。第一項の医療保険制度の抜本改正では、地域保険を中心に産業保険、老齢保険の三つの保険に統合すべきと主張しております。老齢保険は二十五歳から保険金を積み立て六十歳から給付を受けるものであり、実現していれば今頃高齢者医療保険制度創設で財源をどう調達するかを考えずにすんだものと思われます。
 わが国の名目GDPは年々拡大しているにもかかわらず、国民医療費は抑制され続けて参りました。今後、今日の成熟した経済社会のなかで、経済的価値にのみ立脚しない、健康価値に基づいた医療制度改革の議論をいかにして確立し、政策論として提示していくかが求められております。

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