国民皆保険制度崩壊の危機に立ち上がる
ところで、今次選挙において西島候補がとった戦術は、全国をくまなく廻り、信念を熱く語るといったものであったが、聴衆が数多く入った場合であっても、あるいは少数しか入らなかった場合でも、それにかかわらず、自分の思いといったものを熱っぽく聴衆に語りかけた。
まさに、毎日毎日が全力投球の日々であった。
世界に例をみない日本の優れた国民皆保険制度が壊されようとしていること、さらには株式会社の病院経営や混合診療のように民間保険が治療法を左右し、金持ちしか充分な医療を受けられないアメリカ型の医療がいかに危険であるかを、西島候補は熱っぽく語りかけた。
少しでも多くの人に話を聞いてもらうため、長年の友人であった落語界のスター・立川談志師匠に応援演説を頼んだこともあった。
また、植松委員長の「日本人は、バブルで心を失い、今まさに保険制度をアメリカ型にしようという人たちにより、健康が失われようとしている。それを食い止める戦いのシンボルが西島候補だ」というメッセージも強力な援軍となった。
高位当選は、そうした力が結集された結果のものであった。
伝統的業界団体弱体化の中での躍進
今回の参議院選挙では、伝統的な業界団体・支援団体の弱体化が指摘された。
多くの団体の代表候補者が前回よりも得票を減らしているのが特徴的である。
その中で、西島候補は、前回の選挙の時より二万票以上得票数を増やした。
これは、各都道府県医師連盟および各郡市区医師連盟が、国民皆保険制度崩壊の危機感をもち、何としてもこれを阻止しなければならないという思いから、必死にがんばった成果である。
さらに、日本精神科病院協会政治連盟、日本病院会政治連盟、全日本病院政治連盟、日本医療法人連盟、日本母性保護医師連盟、日本眼科医連盟等の医療関連団体も強力な活動を展開した。
支援団体からも強力なバックアップ
また、日本柔道整復師連盟、日本退職公務員連盟、日本臨床検査技師連盟、日本栄養士連盟、日本鍼灸師会政治連盟、全日本鍼灸マッサージ師政治連盟、日本医療事務振興協会、日本医療教育財団、全国病院理学療法連盟、東京都柔道接骨師政治連盟、全国老人保健施設連盟等、多くの支援団体からも、西島候補の掲げる政策に賛同し全面的な支援をいただいた。
健闘目立つ九州地区
各都道府県別の得票数を前回の参議院選挙時と比較してみると、大幅に票数を伸ばした都道府県のトップ十位は、上位から、福岡・大阪・鹿児島・熊本・長崎・山口・栃木・宮崎・愛媛・佐賀県の順となっている。
一方、都道府県によっては、逆に数千票も票数を減らしているところもあり、千票以上減らした都道府県が十県と、相当のばらつき現象がみられる(表1参照)。
また、日本医師会のA(1)会員一人当たりの得票をみてみると、一人で五票以上を獲得したところは、北から岩手・栃木・石川・福井・山口・愛媛・福岡・佐賀・長崎・熊本・宮崎・鹿児島・沖縄県の十三の県であった(表2参照)。
西島候補のお膝元である九州は全体に得票率が高く、中でも断然目立つのは福岡県で、A(1)会員一人で十票近い票を集めている。
また、西島候補が高校時代まで過ごした宮崎県も、一人当たり七票と大健闘した。
その一方で、大都市圏を中心とした都市部においては、大票田にもかかわらず不満足な結果に終わった。
こうした結果を踏まえ、日本医師連盟としては、所期の目的であった西島候補の当選を果たすことはできたものの、予定得票数とはかなりの隔たりがあり、今後に向けて反省・検討すべきいくつかの課題が残った選挙戦でもあった。
いずれにしても、西島候補には、真の医療改革を目指して、国会の場において、さらなる活躍を期待したい。
表1.第20回参議院議員選挙 候補者の都道府県別得票数比較
| 県名 |
得票数 |
前回比増減 |
| 北海道 |
3,660 |
-3,400 |
| 青森県 |
3,323 |
-279 |
| 岩手県 |
4,386 |
1,462 |
| 宮城県 |
2,788 |
-1,842 |
| 秋田県 |
1,624 |
-277 |
| 山形県 |
1,794 |
-271 |
| 福島県 |
1,644 |
-1,078 |
| 茨城県 |
3,969 |
-634 |
| 栃木県 |
6,495 |
3,141 |
| 群馬県 |
4,924 |
-1,058 |
| 埼玉県 |
5,461 |
-2,398 |
| 千葉県 |
6,751 |
-471 |
| 東京都 |
12,476 |
-8,256 |
| 神奈川県 |
4,279 |
-2,831 |
| 新潟県 |
2,456 |
-858 |
| 富山県 |
2,766 |
-829 |
| 石川県 |
3,989 |
434 |
| 福井県 |
2,811 |
562 |
| 山梨県 |
1,151 |
-64 |
| 長野県 |
2,506 |
-891 |
| 岐阜県 |
3,318 |
-2,244 |
| 静岡県 |
3,393 |
-916 |
| 愛知県 |
6,686 |
-2,565 |
| 三重県 |
2,677 |
140 |
| 滋賀県 |
1,845 |
576 |
| 京都府 |
3,242 |
5 |
| 大阪府 |
14,197 |
6,067 |
| 兵庫県 |
8,893 |
1,037 |
| 奈良県 |
4,389 |
459 |
| 和歌山県 |
1,931 |
-352 |
| 鳥取県 |
2,038 |
-19 |
| 島根県 |
2,397 |
122 |
| 岡山県 |
5,442 |
428 |
| 広島県 |
7,556 |
614 |
| 山口県 |
8,514 |
3,477 |
| 徳島県 |
3,127 |
-1,147 |
| 香川県 |
2,495 |
-694 |
| 愛媛県 |
6,397 |
2,669 |
| 高知県 |
2,130 |
564 |
| 福岡県 |
36,661 |
14,734 |
| 佐賀県 |
4,557 |
2,189 |
| 長崎県 |
8,775 |
4,367 |
| 熊本県 |
8,694 |
4,477 |
| 大分県 |
4,166 |
971 |
| 宮崎県 |
5,746 |
2,817 |
| 鹿児島県 |
8,395 |
4,513 |
| 沖縄県 |
3,512 |
981 |
| 都道府県合計 |
250,426 |
23,384 |
※自民党内順位第5位
※比例区内順位第13位 |
表2.A(1)会員1人あたり得票数5票以上の都道府県
| 県名 |
A(1)会員数 |
会員1人当たり
得票数 |
| 福岡 |
3,872 |
9.47 |
| 宮崎 |
808 |
7.11 |
| 山口 |
1,199 |
7.10 |
| 鹿児島 |
1,221 |
6.88 |
| 長崎 |
1,280 |
6.86 |
| 佐賀 |
668 |
6.82 |
| 熊本 |
1,415 |
6.14 |
| 岩手 |
734 |
5.98 |
| 福井 |
479 |
5.87 |
| 愛媛 |
1,095 |
5.84 |
| 栃木 |
1,169 |
5.56 |
| 石川 |
752 |
5.30 |
| 沖縄 |
669 |
5.25 |
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