日医連ニュース
日本医師連盟ニュース
2010/9/1(Wed.) 第62号 1・2・34/4 INDEX
執行委員会開催
三人の候補者、各党代表の挨拶
 執行委員会の協議に先立ち、今回の参議院議員通常選挙で比例代表候補として日本医師連盟が推薦した安藤氏、同じく支援した西島氏、清水氏の三氏、および三氏が公認を受けた政党の代表が来賓として出席し、挨拶を行った(みんなの党の代表は公務の都合で急遽退席)。

 ●小宮山洋子衆議院議員(民主党財務委員長)挨拶(要旨)
執行委員会開催/三人の候補者、各党代表の挨拶(写真) 「先の参議院選挙で安藤氏を日本医師連盟の比例代表候補として推薦いただきながら、しっかりした環境がつくれず残念な結果に終わったことを心からお詫び申しあげる。我々も今回の結果について総括を行っているが、選挙直前の代表・総理交代、参議院での民主党のマニュフェストの位置づけ、代表の発言問題など反省材料は多々あるが、一人区で競り負けたり、思うように票がでなかったことなどから、やはり民主党は地方での力がまだまだ足りないと感じている。安藤氏には是非また頑張っていただきたいと思っている。今後は、九月の代表選を乗り越えて安定した政権をつくり、ぜひまた皆様とともに命を大事にする、医療を大事にする政治に取り組んでいきたい。知恵と力を借りながら超少子高齢社会における日本の医療を一緒につくっていきたいので、今後ともよろしくお願いする」
 ●安藤高夫氏挨拶(要旨)
 「このたびは民主党から公認をいただき、日本医師連盟から推薦をいただいたにもかかわらずよい結果を出すことができず申し訳なく思う。自らの不徳とするところである。全国訪問において、約千カ所の診療所、有床診療所、病院、介護施設をまわったが、地域格差があり、全国一律の基準で運用しようとしても絶対にうまくいかない、より地域の事情に応じた医療や介護が必要であることを痛感した。今回学んだことは医療や介護を通じて社会や地域医療に還元していきたいと考えているが、またチャンスがあった際には、ご指導を賜るようよろしくお願い申しあげる」
 ●河村建夫衆議院議員(自民党選挙対策局長)挨拶(要旨)
執行委員会開催/三人の候補者、各党代表の挨拶(写真) 「先の参議院選では、西島氏の再選を目指して闘ったが、残念ながらかなわなかった。我々は持続可能な高い医療の実現を公約とし、診療報酬の大幅引き上げ、医師不足や医学部定員の問題、臨床研修制度の見直し、有床診療所の機能見直し等々を掲げて闘ったが、その実現には財源が必要だ。五%の消費税では十二兆一千億円の収入しかなく、そのうち国が使える分は約六兆円。年金まで含めた医療、介護には十六兆八千億円必要で、約十兆円不足する。選挙では消費税引き上げ、当面十%を標榜して闘い国民の大方の支持が得られ、与野党のねじれという状況ができた。そのなかでは、特に医療の充実に向けた政策を提言していきたい。そのためにも、西島氏には党本部政調で重要な役割を担っていただき医療制度充実のための先頭に立っていただきたいと考えている。今後もご指導、ご支援をお願いしたい」
 ●西島英利氏挨拶(要旨)
 「先の選挙では、全国の先生から大変なご支援をいただき感謝申しあげる。私の努力が足りず、残念ながら落選となってしまい、皆さま方には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。これまで六年間、皆さまに支えられて国会議員として活動し、今後どのような状況になるのかわからないが、河村先生たちと引き続き相談しながらやっていきたいと考えている」
 ●清水鴻一郎氏挨拶(要旨)
執行委員会開催/三人の候補者、各党代表の挨拶(写真) 「先の選挙では、物心ともに支援いただいたことに心から感謝申しあげるとともに、当選できなかったことは私の力不足と反省しお詫び申しあげる。最近、民主党政権下でも医療費の適正化という小泉内閣の悪夢を彷彿とさせるような言葉が聞かれるようになってきた。仕分けについても、本当に見識のある方が各分野で正しく行うのであればともかく、歴史的背景も含めて知らない方が、社会保険診療報酬の非課税がおかしいとか、税制の特別措置を仕分けするようになるとたいへんなことになる。今回は議席を得ることはかなわなかったが、このままでは悔いが残る。選挙方式である非拘束名簿式比例代表制について十分説明しきれなかった反省も含め、三年後に再度挑戦し、議席を勝ち得て医療界と国民のために働きたい」

今回の反省を糧とし新たな活動の形成を

 協議に移り、はじめに横倉義武副委員長が次のような総括の言葉を述べた。
 「先の参議院議員選挙において、各都道府県医師連盟が推薦した六十人の候補者のうち四十四人を当選させることができたが、比例ではたいへんご努力をいただいたにもかかわらず、最悪の結果を招いてしまった。このことについては心からお詫び申しあげる。比例代表候補については、昨年一月の執行委員会で西島氏の推薦を決定したが、その後政権交代があり、政権与党への態度をある程度明確にする必要があったことから、安藤氏を推薦候補とし、西島氏と清水氏を支援候補として選挙戦に挑むこととなった。会員には、今回の選挙では医師と政治の係わりをどのようにしていいのかがはっきり見えなかったのではないかと思うが、この点についても反省している。今後は、国民皆保険制度を維持しながら地域医療を守るという日本医師会の政策を実現する政治活動が問われてくる。しかし、日本医師連盟は、停滞するわけにはいかない。今度の選挙結果をしっかり反省し、議論して三年後に備えなければいけないと思う。今回、日本医師連盟はある意味においてどん底に落ちたわけだが、逆にいろんなものが吹っ切れたともいえるので、そこから新しい日本医師連盟の活動を形づくっていきたいと考えている。総括としては、このような結果を招いたことを反省し、政治への関与が絶対に必要であることを会員の先生方にご理解いただきたい」
 各執行委員からは、次のような意見が述べられた。

組織内候補さらなる議論が必要

 「今回の結果を見ると、全国的に得票数がかなり落ちていることがわかる。やはり組織ぐるみで政治離れが始まった結果なのだろう。今後、日本医師連盟をどのような組織にしていくのか、その方向を考えていくことが執行委員会の場だと思うので、ぜひ議論していただきたい(福岡)」
 「三人の候補の得票数を合わせて十七万票、これはもう組織内候補云々という状況ではないと思う。それよりも、医系議員を多く集めて日本医師連盟でバックアップして議員連合のようなものをつくり、その人たちを中心に医療政策を実現化していっていただいてはどうか(愛知)」
 「こんな同一組織内で三つ巴の選挙なんかしていたら国民に飽きられる。一人の候補者を国会に送ろうというぐらいのことは今後、しっかり取り組んでほしい。組織内候補が要らないといったら、日本医師連盟も必要なくなるのではないだろうか(栃木)」
 「組織内候補というと、日本医師連盟が丸抱えするという印象が強いが、そうした候補は必要ないと思う。それよりも、自分の力で公認をとってきて立候補するような人を推薦するほうがいいのではないか(埼玉)」
 これに対して、横倉副委員長は「組織内候補もさまざまであり、選挙も資金も丸抱えの候補もあれば、政治家を目指す強い熱意とパワーがあり、推薦や支援だけもらって、あとは自分で切り開いていく候補もいる。今回の選挙では、時間的な制約もありその辺をしっかり議論できなかった。その点は問題だったと思う。やはり、組織内候補だからすべて日本医師連盟に任せるというのは好ましいことではない。組織内候補については都道府県医師連盟や郡市医師連盟の考えもあるので、その点も含めて議論を続けていく必要があると思う」と語った。
 また、医系議員の会について原中委員長は「常任執行委員会でも説明したが、医師免許をもっている医系の国会議員の会をつくる準備を始めたところだ。超党派で、医師であることを中心に物事を考えてもらうための勉強会を開く。そして、政権が変わっても国民のため、会員のための行動をとっていただく」と改めて説明した。

会員の結束力を高めて目的を示すことが必要

 執行委員からは、次のような意見、提案も述べられた。
 「今のやり方ではいい結果は得られない。やはり選挙制度にマッチしたやり方をしていく必要がある。たとえば、日本医師連盟の下に日本の医療を守る会のような組織をつくり、一人の会員が従業員を含めて十人なり二十人なりを集めて教育していく取り組みを行うことが必要だろう(宮崎)」
 原中委員長は「今度、都道府県医師連盟から政治に関心のある若い人を出していただくことになった。最近は、自分たちの給料が医療機関に支払われた医療費からでているという認識すら持たない従業員が増えているが、時代を変えていけるような力を持った人たちを選び、組織改革と意識改革に地道に取り組んでいく」と語った。
 会員の結束力を問う意見もあった。
 「現状では、会員の結束力そのものが非常に低下しており、その結果が選挙にも結びついていると思う。何か会員の箍が外れてしまっているように思えてならない。目の前の選挙のことを考えることも大事かもしれないが、やはり日本医師連盟として具体的な目標を掲げて、わかりやすく示す組織であってほしい(奈良)」
 これに対し、原中委員長は「おっしゃるとおりで、有床診療所の問題、学校医の問題、医療と介護の問題などに懸命に取り組んでいるのにもかかわらず、それがなかなか知られていない。会員はもとより、政治家も厚生官僚も知らない。国民、あるいはマスコミに我々の活動をきちんと見せていくことも必要であり、その方向で一生懸命取り組んでいきたい」と答えた。
 日本医師連盟のあり方に関する意見が寄せられた。
 「かつて百万票とれたものが二十万票しかとれない原因は、以前のように会員が何に向かって政治活動をするのかがわからないからだと思う。日本医師連盟が日本医師会の政治関連団体なら、決定をするのは日本医師会なのか、そうだとするならばどの部門が担うのか、医師連盟とのクロスリンケージはどうするのか、こうした道筋が見えてこないと組織内候補、組織外候補というような議論を重ねても結論は出ないと思う(京都)」
 これについて、原中委員長は「今回は政権交代があり、時間もなかったことからこのような状況になったことをご理解いただきたい。次回は、執行部がきちんとした目標をもったうえで、どのような選挙の仕方をするのかということをしっかり示していきたい」と述べた。
 そのほかにも「施設や医療関係団体によっては、ハードルや利害関係が異なるのだから、それを前提としたうえですべての医師が団結できるような医療環境を形成することが望まれる(佐賀)」「患者さんとの信頼感が失われており、治療をしてもありがとうといってもらえない状況が起こっている。そのことをしっかり見つめ直して、もう一度患者さんをしっかり診て、その心を引きつけることが大事だ(大阪)」など多くの意見が寄せられた。
 予定の時間を大幅に超過して議論が続けられるなか、司会の藤川謙二常任執行委員が、今回の意見を参考に改めて執行部として議論を行い、再度執行委員会を開催したいと述べて、散会となった。

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