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2010/5/25(Tue.) 第60号 123・4・5/5 INDEX
原中勝征会長
民主党 国民生活研究会で講演

マニフェスト作成に向け

原中勝征会長/民主党 国民生活研究会で講演/マニフェスト作成に向け(写真) 日本医師会の原中勝征会長は四月十四日、「民主党国民生活研究会総会」に招かれ、衆議院本館会議室で一時間の講演を行った。
 国民生活研究会(会長・中野寛成衆議院議員)は七月の参議院選挙のマニフェスト作成に向けて社会保障政策を議論する会で、そこでの審議がマニフェスト企画委員会、さらには政権公約会議(議長・鳩山由紀夫首相)に上がり最終決定をみるもの。
 総会は事務局長の平野達男参議院議員の司会進行で始められ、挨拶に立った中野議員は「医療制度は突き詰めると財政、教育、経済などどの分野でも関係のないものはない。民主党にとって耳の痛い話でも率直にいただき、政策(マニフェスト)づくりの糧にしていただきたい」と述べた。
 続いて原中会長が「日本医師会の提言─国民の信頼を取り戻すために─」と題し九項目に整理した講演を次のように要約した。
 まず、「国民皆保険を堅持するための雇用環境の是正」では、非正規従業員の割合が拡大している。給与所得二百万円以下の所得者が一千万人を超えている。生活が苦しく保険料を払えない世帯が増加している。完全失業率はまだかなり高い。
 「医療費の引き上げ」では、二〇〇六年の対GDP総医療費はOECD平均八・九%、日本は八・一%で二十九カ国中二十一位である。二〇〇一年を一〇〇とすると消費者物価指数、実質賃金、診療報酬(全体)は下落しているが、特に診療報酬の下落幅が顕著である。経済指標と大きく乖離しない診療報酬の設定にすべきであり、地域医療崩壊を食い止め、医療を再生させるためにも、医療費を引き上げるなど正しくすることにご理解を賜りたい。
 ただし問題は、行政刷新会議の規制・制度改革分科会でみるように、小泉内閣時代のメンバーが民主党の会議にそのまま入っており地域医療を担う医師が入っていない、これでは、相変わらず格差社会は広がり米国型の医療保険が侵入するので、市場原理主義のような悪い医療制度に戻らないでほしい。
 「患者の一部負担割合の引き下げ」については、日本の患者一部負担割合は先進諸国に比べて高い。患者の一部負担三割はもはや社会保障とは言えない。そのため通院日数が減少し受診抑制が起きているとも考えられる。
 「混合診療全面解禁に対する日本医師会の見解」は、普遍性のある医療は公的保険の対象とし、すべての人々が受けられるようにすべきである。解禁して恩恵を享受できるのは一部の高所得者でしかない。新しい治療や医薬品を保険に組み入れるインセンティブが働かなくなり、医療の範囲が縮小していくおそれがある。自己責任とはいえ、有効性・安全性の確認されていない医療は容認できない。
 「医学部新設に対する日本医師会の見解」については、医師不足の解決は緊急課題と考えるが、医学部の新設をもってこれを実現することには反対である。
 最後に、民主党には是非とも"税財源の確保"を緊急に取り組んでいただき、医療崩壊を再生してほしい、とお願いし講演を結んだ。
 続いて意見交換に移り、七十名ほどの議員のなかから、
(1)混合診療の問題点は何か
 原中会長─一般医療まで保険採用されなくなる懸念がある。
(2)統合医療の問題点は何か
 原中会長─今、あえて科学的根拠が確立していない統合医療が推進される背景には、これをきっかけに混合診療を解禁し、市場原理主義に立ち返ろうという狙いがあるのではないかとの疑念を抱かざるを得ない。日本医師会は強く反対する。
(3)NP(ナースプラクティショナー)についてどう考えるか
 原中会長─診察や治療は、人体に侵襲を及ぼす行為である。そのため、高度な医学的判断および技術を担保する資格の保有者によるものでなければ、患者にとって不幸な結果をもたらすだけでなく、生命をも脅かすことになりかねない。まずは、現行の保健師助産師看護師法のもとで、実情に即してどのような分担ができるのかを検討すべきである。
(4)その他、医師の偏在や配置の問題、精神科医療の改善の要望、税財源の要望等
 おわりに、中野会長から「出席の先生方には原中会長が民主党の味方との期待感が強いと思いますが、最も強い敵になることも孕んでおります。しかしながら、いろんな立場からの意見交換は大切で、今日は交流をはかりながら議論を積み重ねていくよいきっかけになればと思います」と締め、和やかな雰囲気のうちに終了した。

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