日医連ニュース
日本医師連盟ニュース
2006/10/25(Wed.) 第39号 1・2/2 INDEX
武見敬三参議院議員が厚生労働副大臣(労働担当)に就任
(来夏の参議院議員選挙における日医連推薦比例代表候補者)
 さる八月二十二日、日本医師連盟「執行委員会」において、来年夏の参議院議員選挙における比例代表候補者に、現職の武見敬三参議院議員を推薦することに決しているが、武見議員は、今次安倍晋三内閣において、厚生労働副大臣(労働担当)に就任した。
 武見議員は、日医連の推薦を得るに当たっては十六項目にわたるマニフェスト(別表参照)を掲げ、圧倒的多数をもって推薦候補者に選出されたが、今月号においては、今日までの武見議員の国会活動状況や今後の課題等につき、皆さまにお知らせしたい。
武見敬三参議院議員が厚生労働副大臣(労働担当)に就任(写真)

副大臣就任のご挨拶

 この度、安倍内閣のもとで厚生労働副大臣に就任した。国民の生命・生活・尊厳に直接関わる大きな課題を抱える厚生労働行政だけに、大変大きな責任を感じている。これからも、是非会員の皆さまのご支援とご指導を宜しくお願い申し上げる。

日医連ご推薦の御礼と自由民主党公認のご報告

 八月二十二日の日本医師連盟執行委員会では、来年の第二十一回参議院議員通常選挙(参院選)の比例代表候補者としてご推薦いただき、また、八月二十四日には自由民主党本部の持ち回り選挙対策本部会議において同参院選の候補者として公認されたことを御礼とともにご報告させていただく。

国会活動報告

 私の医療政策に関する基本姿勢は、国民の健康価値に立脚し、国民皆保険制度を堅持し、国民がいつでもどこでも安心して医療を受けることができる持続可能な医療制度の確立にある。また、疾病の治療を重視しつつも、最大限の健康価値を追求するために、健康増進・疾病予防・早期診断・早期治療を実現する地域医療と連携した生涯を通じた保健事業の確立を目指している。これまでも、この基本姿勢に基づき、医療提供体制の充実、医療保険制度の改革に取り組んできた。マニフェストもこのような姿勢から呈示させていただいた。

医療制度改革関連法案にて二十一項目の附帯決議を採択
 日本医師会長に唐澤ヨシ人先生が就任され、改めて政府与党との緊密な連携と信頼関係を構築された。医療制度改革関連法案そのものはすでに組み立てられていたため修正できない状況だったが、参議院厚生労働委員会では日本医師会の意見がほとんどそのまま盛り込まれた二十一項目に及ぶ附帯決議を採択できた。この附帯決議は、行き過ぎた医療制度改革に対する是正措置として、重要な橋頭堡になる。また、同附帯決議にて、「地域医療の担い手」を重視した改革を主張した。療養病床については、転換を希望する医療機関が確実に転換し得るよう、「全ての転換を希望する介護療養病床及び医療療養病床が老健施設等に確実に転換し得るために…各般にわたる必要な転換支援策を講じること。」との文章の導入に成功した。

骨太の方針二〇〇六における、保険免責制、後期高齢者負担の引き上げ、診療報酬の抑制導入の阻止
 いわゆる骨太方針とは予算編成の一番の骨格となり、ここでの文言の一字一句の取扱いが非常に重要になる。財政主導型の政府に対し、健康価値を重視し国民医療を守る立場で対峙した。昨年は「総枠管理制度を導入」するための具体的文言削除に奔走した。本年の骨太の方針二〇〇六においては、プロジェクトチーム方式で協議され、「保険免責制、後期高齢者負担の引き上げ、診療報酬の抑制」が具体的に書き込まれた案が出てきた。プロジェクトチームのメンバーとなった私は即座に、どれも財政論的観点から導入が検討されたもので、健康価値に立脚した視点からはとても許されるものではなく国民の利益にならないと主張し、これが受け入れられ削除された。

自殺対策基本法の採択に尽力(議連の事務局を務める)
 自殺防止対策を考える議員有志を超党派の議員で組織し、与党事務局を務め、自殺対策基本法の採択に尽力した。同法では内閣府大臣官房自殺対策推進準備室を設置させ、縦割りでバラバラの行政組織の弊害を克服する法律の枠組みを確立した。同法は、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、併せて自殺者の親族等に対する支援の充実を図ることを目的とし、国等の責務や基本理念等自殺対策の基本となる事項を定めている。

産科における無過失分娩補償制度の実現と、分娩第一期における内診問題
 日本医師会と厚生労働省医政局担当官との間で、具体的、かつきめの細かい制度設計の協議が開始された。現場の声を考慮した、国民と医療提供者にとって安心・安全が担保できる制度設計を目指している。十二月の段階で、おおよその取りまとめを行えるよう現在尽力しているところである。産科における看護師の内診問題についても、現在日本医師会と厚生労働省医政局担当官との間で、これから出す局長通達の内容の取扱いについて協議中である。

社会保険庁の解体
 これまで社会保険庁等改革ワーキングチーム主査として、「のぞき見」問題や、不正免除問題につき徹底調査をしてきた。保険料の本来の目的と異なる支出をすることを禁止し、社会保険庁と契約している財団法人・公益法人等を整理・合理化した。また、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構を設立し、宿泊施設等の売却を決定した。今後も改革を進め保険料収納率の向上を実現し、年金制度の信頼を回復するために尽力したい。

武見敬三参議院議員が厚生労働副大臣(労働担当)に就任(写真)今後の課題

 政府は近年、皆保険制度を守り持続可能にすると主張し、医療費適正化に邁進した。その結果、深刻な問題が皆保険制度を侵食し始めている。つまり、組合健保、政管健保、いずれも被保険者数は縮小し、国民健康保険のみが地域保険として最後のより所になり、被保険者数を増やしている。しかし、国民健康保険でも耐えられない方が生活保護世帯となり、その数が急増している。生活保護の給付の五割を超える部分は医療給付であり、現状を放置すれば持続の可能性はない。国民健康保険料滞納世帯数は平成十七年六月では四百七十万人を超えており、全体のおよそ二割に迫る一八・三%の世帯が滞納している。こうした状況のなかで、医療保険制度を健康価値に立脚して抜本的に改革していく必要性に迫られている。

産科・小児科等の医師不足が政治問題化
 また診療科ごとの医師の確保が喫緊の課題といえる。産科、小児科、麻酔科等の医師不足は政治問題にもなってきた。根本的解決のためにはまず、医師の需給バランスについての調査のあり方から検討し直さなければならない。現在のように量的に、人口十万人当たり医師が何人いるかというのではなく、地域における疾病構造や医療ニーズをしっかり把握したうえで、「この診療科には医師が何人必要である」という計算がきちんとされなければならない。今後最長十年間、十の県で医学部の学生数を毎年最大十人増やしてよいことになった。こうした調査を踏まえて、私は診療科ごとに必要とされる医師数を確保することを考慮しつつ、必要とされる医師を育てるべきだと思う。

国民医療を守るためにこそ医業経営の安定を
 国民医療を守るためには、大局的かつ中長期的視点をエビデンスとともに提示することが重要となる。ひたすら医療費適正化という考え方に走っては、医療の現場を破壊させるだけに終始する。国民医療を守るために医業経営の安定化がまさに重要な課題になっており、それがなければ医療における安全性の確保はできない。医療の質や安全性の確保を考えた時に、医業経営の安定を私は自分のひとつの大きな仕事として考えている。

医政活動の基盤強化が不可欠
 忘れてはならないのは、医療の質や安全性を確保し、国民医療を守るためには医政活動の政治的基盤強化が不可欠であるということである。そのためには医療関係者の積極的な政治参加を心よりお願いしたい。
 幸いなことに私は三年前、西島英利議員という強力な同志を、同僚の参議院議員として得た。これからも西島議員とは、スクラムを組んで問題に取り組む所存である。
 以下、次回の参議院選挙に関して、これまで上に記した私の考え方等をマニフェストにまとめたので(別表参照)、会員の皆さまに呈示し、忌憚のないご意見ご指導をお願いしたい。

武見マニフェスト

  1. 健康の価値を重視した「健康社会」の確立
  2. 負担の公平性と給付の平等性に基づく国民皆保険制度の堅持
  3. いつでも、どこでも安心して医療が受けられる医療提供体制の確立
  4. 生涯を通じた保健事業の確立
  5. 健康増進・疾病予防と地域医療との連携強化
  6. 地域医療と健康づくり事業を繋ぐ、かかりつけ医機能の確立
  7. 終末期を含む、高齢者医療・介護の充実
  8. 医業経営基盤の安定化に基づく医療安全の確保
  9. 地域及び診療科ごとの医師・看護師等の確保と偏在是正
  10. 勤務医の職場環境の改善
  11. 少子化対策としての医療支援体制(産婦人科・小児科等を含む)の確立
  12. 医学・医療の進歩を迅速に取り入れた医療の質の向上
  13. 消費税及び医療税制に対する的確な対応
  14. 社会保険庁の解体―――信頼できる効率的組織の確立
  15. 人間の尊厳・生存・生活を守る人間の安全保障に基づく国際協力の推進
  16. 人間の安全保障に基づく未来志向の強靱な平和主義の確立

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