日医連ニュース
日本医師連盟ニュース
2006/6/25(Sun.) 第37号 1・2/2 INDEX
武見敬三参議院議員国会活動報告 日医連後援・推薦参議院議員
国民医療を守るために―日医・日医連の政策実現に向けて―
 六月十四日、医療制度改革関連法案が、衆・参議院本会議で可決・成立した。
 本法案可決の際、参議院厚生労働委員会において、強行採決を避けるために与野党が調整を行い、混合診療問題に関連した「保険外併用療養費制度」や「療養病床の再編」「生活習慣予防対策」を含む二十一項目の広範囲な付帯決議が採択・可決された。
 国民の立場に立ち、日医・日医連の政策実現に向けて日々尽力されている武見敬三参議院議員について、今次医療制度改革関連法案へのかかわりを中心に、最近の国会活動を報告する。
国民医療を守るために―日医・日医連の政策実現に向けて―(写真)
国民医療を守るために―日医・日医連の政策実現に向けて―(写真)
武見敬三 プロフィール

昭和26年 11月5日生まれ(54才)
昭和49年 慶応義塾大学法学部政治学科卒業

法学研究科政治学専攻法学研究博士課程修了
ハーバード大学フェアーバンクス記念東アジア研究所客員研究員、テレビ朝日「CNNディウォッチ」「モーニングショー」番組キャスター、東海大学教授、日医総研非常勤研究員を経て、現在、参議院議員2期目

■ 主な現役職 ■(※は新規)

<参議院所属委員会等>

決算委員会           ※理 事
憲法調査会            幹 事
厚生労働委員会          委 員 他

<参議院自民党>

自由民主党政策審議会       副会長 他

<自民党>

政務調査会   副会長(※厚生労働担当) 他
厚生労働関係:
 社会保障制度調査会(医療委員会)副会長
 社会保険庁等の改革ワーキンググループ
                ※主 査
 少子化問題調査会        幹 事

医療政策決定過程の変化と複雑化

 小泉政権下で政策決定過程が随分変わってきた。とくに昨年の総選挙以降、トップダウンの政策決定の力が強くなった。
 昔はボトムアップの政策決定で物事が決まっていた。その過程は、まず厚生労働省の局や課が原案を作成して、このレベルで、実は日本医師会の担当常任理事とも横の連携をしていた。そして有力議員に個別説明をして了解が得られると、大臣経験者を中心として中堅幹部も入れた幹部会議に掛けることになる。私もおよそ三年前からこの幹部会議のメンバーを務めている。幹部会議は非公式ではあるが、いわゆる厚生労働関係の有力議員十二〜十三名で構成されており、ここが実は重要な取りまとめを実質やってきた。ここでおおよそ取りまとめが行われると、初めて厚生労働部会や予算等合同会議など公の党の政策決定機関に計られる。そこで了解が得られると、政務調査会審議会そして、党の最高意志決定機関である総務会に進む。さらにそこで了承が得られると、正式に閣議決定されて法案として国会に提出される。従来は、このようにボトムアップで政策が決められてきた。
 ところが、行政改革の結果としてトップダウン型の政策決定の仕組みが導入された。規制改革・民間開放推進会議等の民間議員と総理大臣が連携したトップダウンと、内閣府を仕切る財務省と総理大臣が連携したトップダウンと、二通りのトップダウンの政策決定が行われてきた。これに加え最近は、トップダウンの新たな類型として、自民党政調会長の下に組織された歳出改革に関するプロジェクトチームや政府・与党で構成する財政・経済一体改革会議等が新たに主導力を発揮する一方、ボトムアップもまったく姿を消した訳ではなく、より複雑な政策決定の過程へと変化してきた。

医療制度改革の特徴と問題点

■極めて遺憾な医療費抑制等の導入
 今回、都道府県は高齢者医療確保法のもと、五年ごとに医療費適正化目標を策定することとなった。五年後の評価によっては知事との事前協議を踏まえて、ほかの都道府県と異なる診療報酬を策定できることになる。このこと自体問題だが、結果として医療の格差が生じることで、給付の平等の理念が崩れる懸念がある。ここで私は医療制度改革大綱のなかで、「不適切な格差が生じないよう配慮する」という文言を組み込ませ、高齢者医療確保法第十四条のなかでも、「地域の実情を踏まえつつ、適切な医療を各都道府県間において公平に提供する観点から見て合理的であると認められる範囲内において、他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めをすることができる」という文言を書き込ませた。「不適切な格差が生じないよう配慮する」という文言をそのまま書き込めなかったが、その理由は法技術にあり、この二つの文言が同じ意味をなすことを六月六日の厚生労働委員会にて確認した。
 さらに、西島英利参議院議員と一緒に活動し、健康保険等の一部を改正する法律案と医療法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議においても、地域格差是正のための文言を書き込ませることに成功した。
■生活習慣病対策を中心とした健康政策の導入
 今回、生活習慣病を阻止するための目標値を設定することが改めて法律上でも明記された。そうすると、保険者が策定する特定健康診査等実施計画・五か年計画と、都道府県が策定する都道府県健康増進計画・十か年計画、それぞれが目標値をもって取り組むことになる。都道府県の責任でやることと保険者の責任でやることを実際にどのような形で調整するかという時に、この地域・職域連携推進協議会が果たす役割は極めて大きいと思われる。地域・職域連携推進協議会は、健康増進法の第九条に基づく健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針に位置づけられており、都道府県についていえば、都道府県における健康課題の明確化、各種事業や研修の共同実施あるいは連携方策、また各種施設等の相互活用というようなこと等、地域と職域における連携推進の方策等について協議をするものとされている。
 この協議会は、都道府県内の地域保健および職域保健の関係者として、医師会等の地域の保健医療関係者、都道府県関係部局等の行政機関、それから国民健康保険団体連合会等の医療保険者、そして事業所の代表者等で構成することを想定しており、都道府県の健康増進計画の内容の充実や、健診、保健指導等の保健事業の推進に当たり、調整、連携を具体的に図っていく場としてその役割が期待されている。
 また、健康保険等の一部を改正する法律案と医療法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議の第八、第九項目で健康づくりの体制づくりに係わるところで、「地域医療を担う関係者の協力を得つつ」という文言を組み込み、医師会およびスポーツ認定医の役割を確保することとした。
 ところで従来、保険者機能は縦割りであり、市町村がする健康づくり事業は、同じ市に住んでいても、政府管掌健康保険の被保険者や組合健康保険の被保険者を除いていた。しかも、地域社会のなかの枠組みで健康づくり事業を地域医療と連携させる必要がある。
 したがって、その保険者機能の縦割りをどうやって克服し、さらに地域医療という横軸を組み込み効果を上げるために、この地域・職域連携推進協議会をどのような人たちで構成してどのように運営するかにかかっており、同協議会を上手につくることが極めて肝要となる。
■地方分権化による医療政策決定過程の変化
 上記を含み、今後、都道府県ごとの保険者の整理統合が進められ、保健・医療政策の決定過程も変化することが予測される。国・都道府県・郡市レベルの各医師会の新たな体制の強化と連携が求められている。

医療制度改革関連法案について

 医療制度改革関連法案について、健康保険法等の一部改正については三百六十五もの政省令が必要とされており、そのうち中央社会保険医療協議会(中医協)への諮問が必要だとされているのが二十四項目もある。また、医療法についても七十五の政省令が必要とされている。このように、法案が採択された後も、同政省令がどのように策定されるかを見極め、しっかりとした政策論のもと真に国民医療を守るために継続した努力が求められる。

医療制度改革関連法付帯決議抜粋(八〜十)
八、 今後の保健事業の推進に当たっては、生活習慣病の予防健診や住民の健康増進のための事業を充実するよう、地域医療を担う関係者の協力を得つつ、医療保険者や市町村の健診・保健指導の実施体制の確保に一層努めるとともに、入手した個人データについては、委託先を含め個人情報保護法の観点から万全な管理体制を確立すること。さらに、地域・職域における健康づくりを体系的・総合的に行うために、生活習慣病予防に向けた国民運動を積極的に展開するとともに、生活習慣病予防対策の実施状況を踏まえ、必要に応じ健康増進法の見直しについて検討すること。また、被扶養者の健診の普及を図るため、その利用者負担も含め機会の確保に十分に配慮すること。
九、 生活習慣病予防を強力に推進するために、市町村に加え、保険者又はその委託先等に、地域医療を担う関係者の協力を得つつ、保健指導の担い手である保健師又は管理栄養士等を適正に配置するよう努め、計画的に実行できる体制を整備し、その効果の検証を行うこと。
十、 療養病床の再編成に当たっては、すべての転換を希望する介護療養病床及び医療療養病床が老人保健施設等に確実に転換し得るために、老人保健施設の構造設備基準や経過的な療養病床の類型の人員配置基準につき、適切な対応を図るとともに、今後の推移も踏まえ、介護保険事業支援計画も含め各般にわたる必要な転換支援策を講ずること。また、その進捗状況を適切に把握し、利用者や関係者の不安に応え、特別養護老人ホーム、老人保健施設等必要な介護施設及び訪問看護等地域ケア体制の計画的な整備を支援する観点から、地域ケアを整備する指針を策定し、都道府県との連携を図りつつ、療養病床の円滑な転換を含めた地域におけるサービスの整備や退院時の相談・支援の充実などに努めること。さらに、療養病床の患者の医療区分については、速やかな調査・検証を行い、その結果に基づき必要に応じて適切な見直しを行うこと。

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