セミナーは、西島英利参議院議員の司会で、まず唐澤祥人東京都医師政治連盟委員長の発起人代表挨拶で始まり、続いて武見敬三参議院議員が登壇し、「今日の政治的課題は、まさに社会保障のあり方を考え直し、人間の健康をいかに守るかということであり、社会保障の問題を全体としてどのように理解するのかということが至上命題となっている。年金の問題ひとつを取ってみても、それひとつだけでは議論が尽きないことは明白であり、保険・医療・福祉・年金・介護のすべてを見直す大きな理念が政策上求められている。この大変革期において、皆様方のご支援とご指導を賜り、誤りなき道をわが国が歩めるようにご支援いただきたい」との挨拶があり、続いて、植松治雄日本医師連盟委員長が「今、医療に求められるもの」と題して講演を行った。
植松委員長は、同講演において、「今日、日本の医療の現状をみると、WHOの報告にあるように、健康の達成度、寿命、乳幼児死亡率で大きな成果を挙げている。しかも比較的安い医療費で大きな成果を挙げているのが特徴である。そして、この裏づけとなっているのが国民皆保険制度であり、何としてもこれを守っていかなければならない。
断固、混合診療に反対
―市場経済原理では命と健康は守れない―
「次に、医療改革のあるべき姿は、いかによい医療を国民に平等に効率的に提供できるかということを模索し、それを実現することである。それに反し、今進められている医療改革は財政主導であり、混合診療の解禁をした場合、保険外の医療、いわゆる自由診療ということで、自分でお金を払わなければならない医療というものが出てくる。そして、誰もがその保障を求めて民間の医療保険に加入せざるを得なくなる。その結果、保険産業界は大きなメリットを享受し、大きな発展を遂げることになる。いうなれば、混合診療というものは、民間保険を拡大し、そのことにより経済の発展を促すために行われるにすぎないのである。
国の経済も大事であるが、そのことだけで国民が安心で、幸せになることができるとは思わない。政府は、国のあるべき姿、国民の健康と幸福というものを最大の目標に掲げる政策を示していただきたい。
現在、私どもは、混合診療を通じて、国民皆保険制度が崩壊に近づくのではないかという危惧をもって、反対の運動を展開しているが、これはひとえに国民の幸せを願ってのことであり、医師会、医療従事者の利益を考えてのものではないということを是非ご理解いただければと思う」と述べた。
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